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目から脳に視覚情報を伝える"第3"の神経経路を発見 "動き"の検出に特化した経路である可能性

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内容

シドニー大学のパーシバル・くみ子 研究員のグループと、自然科学研究機構 生理学研究所および同機構 研究力強化推進本部の小泉 周 特任教授は、新世界サル(マーモセット)の網膜から脳の視床に視覚情報を送る“第3”の神経経路を発見し、米国神経科学会雑誌(ザ・ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス 2014年3月12日号)に成果を報告しました。これまで霊長類では、2つの経路(視床のM層経由型とP層経由型)が目で見た画像をそのまま脳に伝えている、ととらえられていました。新しい経路は、視床のK1層を経由し視覚情報の中でも特に“動き”の情報を検出している可能性があります。
 

 研究グループは、哺乳類の中でもヒトに近い視覚系をもつ霊長類(新世界サル(マーモセット))の網膜に注目。小泉らは、マーモセット網膜への遺伝子導入法を開発し、これまであまり研究されていなかった霊長類の網膜に数少なく存在する神経細胞の可視化に成功しました。
 この手法および視床の特定の領域に色素を注入する方法を用いて、網膜から視床の特殊な層(K1層)へと情報を伝える、複数の神経細胞のつながりを調べました。その結果、網膜内のDB6双極細胞が網膜の狭棘状細胞(ナロー・ソニー神経節細胞)という神経細胞につながり、狭棘状細胞がK1層へ情報を送っていることがわかりました。
 K1層には、視覚情報のうち“動き”に反応する細胞が多く存在すること、K1層の情報が “動き”の情報処理を行うMT野にも直接情報を伝えていることから、今回発見した経路は、“動き”の検出に特化した神経経路であることが示唆されました。

 小泉特任教授は「今回の研究で、これまで単純なカメラのフィルムとして考えられていた霊長類の網膜でも、特殊な情報処理をするための情報処理経路があることが明らかになりました。今回発見した“動き”の検出に関与する神経経路が、目が見えない方の“ブライドサイト”(見えていると意識しないのに、ある種の情報が脳には直接送られている)と呼ばれるような能力に関与しているものと考えられます」と話しています。

科研費ロゴ.jpg


本研究は文部科学省科学研究費補助金の補助を受けて行われました。また、基礎生物学研究所マーモセット研究施設にご協力頂きました。

今回の発見

1.新世界ザル(マーモセット)網膜の狭棘状細胞が、網膜のDB6双極細胞からの情報をうけとっていることがわかりました。
2.狭棘状細胞は、視床のK1層へ情報を送っていることがわかりました。
3.K1層にはモノの“動き”に反応する細胞があり、“動き”の情報処理を行うMT野に直接情報を送っていることから、今回発見した経路が、“動き”の検出に特化した経路であることが示唆されました。

図1 狭棘状細胞とDB6細胞

PressRelease_Kumiko_Koizumi_1.jpg解説
 緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子導入と免疫染色によって可視化された、狭棘状細胞(緑)と、DB6細胞(赤)。網膜内で、狭棘状細胞がDB6細胞とシナプスをつくり、情報を受け取っていることが明らかとなりました。また、脳の視床に色素を注入する方法で、視床(外側膝状体)のK1層からこの狭棘状細胞がつながっていることが明らかとなりました。

この研究の社会的意義

目から脳へ“動き”の情報を伝える特殊な神経経路を発見

 本研究から、これまで単純なカメラのフィルムとして考えられていた霊長類の網膜でも、特殊な情報処理をするための情報処理経路があることが明らかになりました。
今回発見した経路は、“動き”の検出に特化した経路であることが示唆されました。この経路が、目が見えない患者の“ブラインドサイト”(見えていると意識しないのに、ある種の情報が脳には直接送られている)と呼ばれるような能力に関与しているものと考えられます。PressRelease_Kumiko_Koizumi_2.jpg

論文情報

Identification of a Pathway from the Retina to Koniocellular Layer K1 in the Lateral Geniculate Nucleus of Marmoset
Kumiko A. Percival, Amane Koizumi, Rania A. Masri, Péter Buzás, Paul R. Martin, and Ulrike Grünert
The Journal of Neuroscience, 12 March 2014, 34(11): 3821-3825; doi: 10.1523/JNEUROSCI.4491-13.2014

お問い合わせ先

<研究について>
自然科学研究機構 研究力強化推進本部
特任教授 小泉 周 (こいずみ あまね)
Tel: 03-5425-1301
email: a.koizumi@nins.jp

<広報に関すること>
自然科学研究機構 生理学研究所 広報展開推進室
FAX: 0564-55-7721
email: pub-adm@nips.ac.jp

自然科学研究機構 研究力強化推進本部
特任准教授 松山 桃世(まつやま ももよ)
TEL: 03-5425-2046
email: m.matsuyama@nins.jp
 

 


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